膜構造建築物についての解説|構造・建築行政上の取り扱い・テントの歴史と現状

膜構造建築物の構造について解説します。※こちらのページは「入門・テント技術」/日本テントシート工業組合連合会 編 より抜粋して作成しています。

膜構造は構造形式により骨組膜構造・サスペンション膜構造・空気膜構造の3種類に分けられ、さらにそれらは支持方法により幾つかに分けられる。また、他に異なる構造形式の組合せによる複合構造形式もある。

骨組み
テンション
エアーテント

骨組膜構造

鉄骨造その他の構造の骨組に膜材料を張ることにより屋根または外壁を形成する構造方法をいう。骨組の架構法は、ラチス梁と単一部材の組合せあるいはラーメン構造、トラス構造がある。形態としては、平面または一次曲線を用いたものや鞍型に代表される二次曲線を用いたものがある。

サスペンション膜構造

膜材料を主材料として用い、基本形状を吊り構造(サスペンション構造)とした構造方法をいう。サスペンション膜構造は引張力のみに抵抗することのできる部材から構成されており、曲面を安定させる復元力は同一面内に含まれる吊り成分と押さえ成分との緊結によって得られる初期張力によって与えられる。それゆえ曲面は外部荷重に対して曲面内せん断力と張力の釣り合いからなる膜応力状態になる。ここでは、一応そのような膜応力状態になるサスペンション構造をサスペンション膜構造と名づけ、膜構造という特殊な分野に含ませ、この構造に含まれる原理的に異なる空気膜構造と区別している。また、このサスペンション膜構造はさらに膜材料の材質的な見地から2種類に分けられる。

(a)ザイルネット方式

この構造はサスペンション膜構造のうちとくに鋼索、もしくはこれに類する線状の材料を使って網状とし、これを構造体としてその表面あるいは裏面に織布またはフィルムで覆ったものをいう。この構造物の特徴は織布やフィルムのみを使って構成する膜(membrane)方式とは異なり、膜面張力を必ずしも均一にすることもなく、そのため曲面形態をかなり自由に設定することができる。また強度の高い材料もあることから、この構造によれば大空間架構も可能である。

(b)膜方式(メンブレイン方式)

ザイルネット方式におけるザイルネットのかわりに、織布やフィルムのみを使って等張力曲面に近い曲面を構成する構造物を膜方式という。この膜方式では、一般に膜面自体が非常に柔軟で、膜面張力はできるだけ均一にしないと局部応力を生じたり“しわ”を生じる恐れもある。しわを生じるところでは、しわに直角方向の膜応力は零となる。そこで膜方式では膜面張力をできるだけ均一にする必要があり、この点がザイルネット方式と大きく異なるところである。

空気膜構造

膜材料を用いて形成された屋根及び外壁の屋内側の空間に空気を送り込むことによって、内部の空気の圧力を高め、膜材料を張力状態とし、荷重及び外力に対して抵抗する構造方法をいう。
空気膜構造の種類としては、以下の3つの方法がある。

(a)一重膜構造

石鹸の泡がそうであるように、膜は一重であり、膜内圧は内部空間にかけることになる。この方式は最も一般的であるように、規模の大きいものができる。しかし、出入りにより内圧がやや下がるので入口は、二重扉、回転扉を使うことになる。また内部空間に人の出入りがあるので高圧にはできない。

(b)二重膜構造

二重膜構造では、二重に張った膜の間に空気を送り込み空気枕のようにするもので、一重膜構造の時よりもやや高い圧力をかけることができる。これによって剛性の高いパネルのようなものとなり、全体として曲げにも抵抗することができる。また、一重膜構造のように、入口にある制限が加えられるのと異なり、オープンシステムにすることができる。
東京ドームのような音響・空調等を目的とした内膜は、構造体ではないので二重膜構造とはならないので注意が必要である。

(c)チューブ膜構造

チューブ膜に高圧空気を送り、剛性の高い線部材となるもので、アーチにして圧縮、曲げに抵抗させ、あるいは積み上げて、圧縮に抵抗させようとする方法など、あるいは補強ワイヤーを併用して橋桁に使う例などがある。

かつて、膜構造を用いた建築物については、建築行政上、原則として、建築基準法令で予想していない特殊な構造方法として個々の建築物ごとに、建築基準法第38条の規定に基づく建設大臣認定を要するものとして運用してきた。

しかしながら、関係者の方々の努力により、膜構造技術に関する研究開発が進展し、建築実績が積み重ねられてきた結果、一定の条件下で、建築物としての安全性を確保するに足る技術基準等が作成され、認定手続きの簡素化が図られた。

つまり、昭和62年11月16日付けで、膜構造の技術基準等が法第38条の規定に基づき建築基準法令上に位置づけられ、これに適合する膜構造建築物については(社)日本膜構造協会の設計審査を経た後、他の一般的な構造と同様に、建築主事による建築確認だけで建築が認められることとなったものである。これ以外も含め現在膜構造建築物の取り扱いは、具体的には次のようになっている。

中小規模膜構造建築物技術基準

骨組膜構造で膜構造部分が500m2以内の建築物を対象としてその技術基準に対し38条認定され、建築指導課長からその旨通達されている。設計者、膜材料の製造者などに特段の認定条件はなく、技術基準に適合すれば誰でも申請できる。建築に当たって必要な行政手続きは、今回の技術基準が審査対象に加わるほかは、通常の建築確認と同じである。

特定膜構造建築物技術基準

骨組膜構造で膜構造部分が500~5,000m2の建築物、サスペンション膜構造及び空気膜構造で膜構造部分が3,000m2以内の建築物を対象として、(社)日本膜構造協会あてにその技術基準に対して38条一般認定が行われている。設計者などに特段の認定条件はないが、膜材料及び膜体加工工場については協会の登録を受けることとされ、また、協会は膜体の専門家として設計者などにアドバイスができる膜体技術責任者を定めるなど、所要の品質管理及び維持保全を行うこととされている。行政手続きについては、建築確認で取り扱われる。

※「入門・テント技術」/日本テントシート工業組合連合会 編 より抜粋/2011年8月30日時点

構造物の大型化に伴う様々な注意点の出現

(1)構造物としての注意点

まず、サスペンション膜構造では、かつての吊り屋根で発生した降雨時の「ポンディング(屋根面の水たまり)」が発生する。次いで、かつての吊り橋や吊屋根の倒壊の原因となった強風の「フラタリング(バタツキ)」が発生する。

また、空気膜構造では、かつての軟式飛行船の墜落原因であった膜面の「引裂伝搬」が発生する。コンクリート基礎など固い部分と接するところで、膜面を横方向に引っ張ると破断することがある。

これらの現象に対応するため、サスペンション膜構造では膜面形態にHP(ハイパボリック・パラボロイド)曲面を採用し、初期張力を導入して、常に膜面を張りつめた状態に保つ工夫がとられた。また、空気膜構造では風圧に対応する内圧の値を定め、変動する風圧のもとでも常に膜面を張りつめた状態を保つ工夫がとられた。これに伴って送風機や自動制御装置の知識が必要となった。

構造解析の面では、従来の静的解析に加えて動的解析も行われるようになり、また従来の線形解析から非線形解析へと変えていった。しかし、結露や音響など内部環境の面ではいくつかの問題を残した。

さらに、色・形・文字・意匠などが中心となる小型テントと同様に、材料選択や接合方法の面では共通するところが多いが、大スパンを狙う大型のテントでは、構造の面でまた異なる工学的知識や技術の蓄積が必要であると痛感させられる時代が長く続いた。

(2)材料としての注意点

膜面を「ポンディング」や「フラタリング」から守るために、初期張力を導入して常に膜面を張りつめた状態に保つ工夫がとられるが、この初期張力が大きすぎると膜面は伸び続けやがて「クリープ破断」することもあり得る。また、膜面に極度に大きな張力がかかったり弛緩したりの繰り返しがあると、航空機部材によくみられるような「繰り返し疲労」で破断することも考えられる。

膜材料は、大変形を許す材料であり、また金属などと異なりたて方向とよこ方向では異なる「応力 伸び特性」を示すので、これが取り付け時の膜面のタルミやヒキツレを起こさせる誘因になる(*1)。また、引張って取り付けた後での膜面寸法の経時変化の予測を難しくしている。初期応力を導入するには、膜材料の2軸「応力伸び特性」の把握が必要である。

大型化の初期では、繊維に発生するカビも大きな問題となり、一現場のテントを全部新品に取り替えたこともあった。膜材料の切断面やミシン縫穴からの水が誘因である。

テントの寿命は、膜材料や支持材料の経時劣化で決まるが、紫外線量や空気中の煤埃の量など立地条件など外部環境によって大きく異なる。
また、膜面に付着する汚れはテントの商品価値を下げ、顧客のテント離れを促すことになる。汚れは初期から問題となっていたが、現在は新技術によって改善の見通しがたった所である。

(3)接合部としての注意点

初期張力が大き過ぎると膜面の接合部も伸び続けやがて「クリープ破断」することもあり得る。しかし初期張力が大き過ぎなくとも、膜面の温度が摂氏50度を超えるかもしれない例えば真夏の炎天下では、膜面の溶着接合部が伸び続け、やがて「高温クリープ破断」することもあり得る。

ミシン接合部では縫糸が太陽の紫外線を浴びて経時劣化し破断することに注意しなければならない。

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